市制100周年 川崎市映像アーカイブ

新着情報

2023年03月24日

川崎市内 区制周年を振り返る 座談会前編:私たちの区制周年紹介と関わり方

川崎市では、令和4年度に各区が区制40周年、50周年を迎え、区役所と区民が一体となって周年事業を行いました。そこで7区を代表して、区制40周年を迎えた麻生区、区制50周年を迎えた幸区・中原区の周年事業に携わった3名にお集まりいただき、主な周年事業をご紹介いただくとともに、川崎市の歴史を収めた「川崎市映像アーカイブ」を見ながら、各区の歴史を振り返っていただきました。

参加者紹介

 

麻生区・岩倉宏司さん

地域情報誌「マイタウン」を制作する株式会社エリアブレイン代表取締役、新百合ヶ丘エリアマネジメントコンソーシアムの企画・運営、事務局を受託する株式会社ビュグラー代表取締役。

 

幸区・人見雅子さん

かわさき市民活動センター勤務。NPO法人幸区盛り上げ隊の編集長として地域情報を発信。かわさきシアターカンパニーの劇団員としても活動中。

 

中原区・池田賢一さん

中原区役所地域振興課係長。区民とともに、区の魅力の発信や地域課題の解決に携わる。

 

親から子へ思い出がつながっていく。それが周年イベントの素晴らしさ

——まずは、それぞれの区が行った周年事業から教えてください。

 

岩倉

麻生区は、もともと多摩区からの分区ということもありますので、新たにまちを作っていった40年間の思いを振り返るという考え方が強かったと思います。

 

区制30周年の時も周年事業に関わらせていただいたのですが、その時は麻生区の誕生から30年分の写真を集めて写真集を作ったんですね。ただ、それ以前の写真はまとまってませんでしたので、今回、麻生区が誕生する前の新百合ヶ丘や、麻生区周辺の写真を地域の皆さんにご提供いただきました。

 

どれぐらい集まるのかなと心配していたんですけども、1960年代、1970年代の写真がたくさん集まりまして。区のホームページにまとまっていますので、ぜひご覧いただければと思います(麻生区写真アーカイブ参照)。

 

それから、子どもたちを中心に、麻生区の未来への思いが詰まった絵画を描いてもらい、小田急電鉄や三井不動産など地域の企業や団体が賞を決定して、新百合ヶ丘駅周辺での展示や、区制40周年の特設サイトに応募作品を公開しました(「あさおの未来を描く絵画展」受賞作品参照)。

 

麻生区産の野菜や、音楽のまちを象徴する風景、こんな公園があったらいいなといった思いが絵に表れていて、子どもたちが麻生区のことを考える良い機会になったのではないかと思います。

 

そして、新百合ヶ丘駅の北口と南口の全域を使った「しんゆりフェスティバル・マルシェ」と「あさお区民まつり」の同時開催は、企画運営側の人間としてはどうなるか大変心配だったのですが、皆さんがスムーズに北口と南口を行き来して楽しんでくださいましたし、今年度で16年目となったイルミネーションイベント「kirara@アートしんゆり」では、区制40周年を祝うメッセージを添えたメインツリーの点灯など、特別なイベントを多く企画しました。

 

同時開催された「あさお区民まつり」と「しんゆりフェスティバル・マルシェ」は、新百合ヶ丘駅の北口と南口を行き来する人で賑わった。

 

年末年始に点灯したイルミネーションのメインツリーも区制40周年仕様に。

 

区制40周年記念の冠事業の募集を行った際には100以上のイベント等が集まり、まち全体が区制40周年を意識してくださり、自分事にしてくださったことが、すごく良かったと思います。

 

人見 私も時々新百合ヶ丘に行くんですけど、麻生区の皆さんって常に駅前で何かをされているイメージがあって、イベントを実施するのに慣れていらっしゃいますよね。

 

岩倉 「川崎市映像アーカイブ」を見ていただくと分かるとおり、昔は本当に何もない場所だったので、自分たちが動かない限り何も生まれなかったんですよ。麻生区ができた時から、自分たちで動いて、自分たちの力で色んなネットワークを作って、自分たちのしたいことをするというのが麻生区流だったんです。その結果、色んなことが起きているという感じですね。

 

人見 音楽大学があるから音楽のまちになったということではなく、先に区民が動いていた、と。

 

岩倉 そうですね。そういった動きになっていったので、じゃあこのまちがいいかなということで、音楽大学ができたり、映画大学ができていったのではないかと思います。

 

——では続いて、幸区の周年事業を教えてください。

 

人見 幸区は区制50周年の年でして、私が直接関わった事業ではないのですが印象に残っているのは、「区民の手で作った大きな木懸垂幕」ですね。これは、大きな木の幹が描かれた懸垂幕に人の手形で花を咲かせたものです。みんなが見られる幸区役所に掲示されているので、参加した人は区制50周年を自分ごととして捉えられましたし、区民ひとりひとりの力でできているんだな、ということが分かる作品になりました。

 

約2,000人の手形で彩られた懸垂幕は、完成後に幸区役所庁舎壁面に掲示。

 

「幸区盛り上げ隊」としては、コロナがきっかけでお家から出なくなったり、色んなイベントが中止になったりしている中、ちょっとでも気持ちを盛り上げるツールをということで、幸区オリジナルの盆踊り「幸わいわい音頭」を作りました。

 

振り付けの動画を幸区の動画チャンネルにも載せていただき、色々なところで踊りのワークショップを開催したり、イベントで踊ったり、曲のCDをお配りしました。

 

座ったままできる振り付けもありますし、小さなお子さんから高齢者まで楽しめる踊りになっていて、隣の人とコンタクトをとるような振り付けも入っています。法被(はっぴ)を着るポーズをしながら歌う“ハッピー、ハッピー”というフレーズは、幸区を表した歌詞なんですよ。

 

区民から募った言葉で綴られた歌詞にも注目の「幸わいわい音頭」。

 

池田 幸区は“幸せ”という字が入っていますもんね。

 

人見 すごくラッキーな名前だと思います(笑)。歌詞は区民の方からアイディアを募集して作ったので、区民の皆さんの思いが詰まったものになりました。1番は幸区の自然のことを、2番は幸区の歴史を歌った歌詞にも注目していただきたいですし、駅の発車メロディーに使っていただくことが目標です(笑)。

 

音頭を作ったのが昨年度で、今年度の区制50周年の際は、「幸区民祭」やラゾーナ川崎プラザの秋祭り、幼稚園や町内会のイベントでも踊っていただきました。この流れを区制50周年の年で終わらせるのはもったいないので、今後も色んなところに広めていって、幸区の良さを伝えていきたいなと思っています。

 

岩倉 麻生区にも「かがやいて麻生」という区のイメージソングがあるんですけど、踊りがついていると、より楽しくて良いですね。

 

池田 この踊りによって子どもたちが幸区のことを自然に知ることができるのも良いと思います。

 

人見 新しく幸区に引っ越して来た方も、この曲が地域のお祭りで流れていると「何だろう?」と気にしてくださると思いますし、外国の方にも、言葉は分からなくても楽しんでいただけるので、これからも色んなことに使っていただきたいと思います。

 

——では続いて、中原区はいかがでしょうか?

 

池田 中原区は区制50周年ということで、色々な事業を行いました。例えば、冠事業のイベントに参加していただいた方に、川崎フロンターレのサイン入りユニフォームなど区の魅力ある記念品をプレゼントしたり。中でも私が関わった事業で特に力を入れたのが、区のPRムービー(「このまちのどこが好き?」)です。

 

区民の皆さんの好きな場所を映像に入れるといったコンセプトで、「こすぎの大学」さんと一緒に中原区の魅力を語るワークショップをオンラインで開催しまして、そこで出た意見をもとに地域の方と一緒にPRムービーを制作しました。

 

中原区はスポーツチームに恵まれた地でもあるので、川崎フロンターレ、川崎ブレイブサンダース、NECレッドロケッツ、富士通レッドウェーブ、富士通フロンティアーズと、サッカーやバスケットボール、バレーボール、アメリカンフットボールの選手の皆さんにも映像に出演していただきました。

 

中村憲剛さんがサポーターの皆さんと一緒に踊るシーンは、無理かなと思いつつもお願いしたところ、川崎フロンターレのホーム最終戦の後に撮影できまして。総勢500人のサポーターの皆さんの前で憲剛さんが踊ってくださり、サポーターの皆さんにとっても良い思い出になったのではないかと思います。

 

川崎フロンターレFROの中村憲剛氏を始め、中原区を愛する総勢700名が参加した区民参加型ムービー。

 

ほかにも、スポーツが盛んな橘高校の生徒さんたちに部活のユニフォームを着て踊っていただいたり、商店街や保育園、中原区の商業施設の方にも出ていただき、商業施設のサイネージでも流していただきました。

 

区の魅力を詰め込んだので、中原区って楽しいまちなんだなということを知っていただけるようなムービーに仕上がったと思います。使用している音楽も、中原区制30周年の際に作った曲を、地元出身のミュージシャン(きつねのトンプソン)がアレンジしてくださったんですよ。

 

人見 撮影ではドローンも使っているんですよね。

 

池田 はい。国土交通省にこの企画の話をする時に、映像で使用する音楽を聴いていただいたり。この音楽に応援された気持ちになりましたね(笑)。

 

人見 中原区は、人も場所も色んな資源があって羨ましいです。

 

池田 ありすぎて逆にどうしようという感じでしたけど(笑)。ここは外せないよね、という場所や人がたくさんありますので。

 

岩倉 何もなかったところからスタートした麻生区とは、だいぶ違いますね(笑)。

 

池田 いえいえ(笑)。それと、もうひとつ、中原区は記念式典ではなくてイベントを開催しようということで、地元出身の「上々軍団」というお笑いコンビに司会をお願いして、グランツリー武蔵小杉のオープンスペースで区制50周年イベントを開催しました。

 

イベントのメインが、20世紀最後の日に中原区役所に設置したタイムカプセルの開封だったのですが、実はカプセルの中身が劣化していまして。それに関しては残念でしたけど、PRムービーの音楽を担当してくださったきつねのトンプソンさんのライブや、過去から現在、未来へのつながりをイメージしたミュージカル調のエンディングを「なかはらミュージカル」の皆さんが披露してくださるなど、楽しいイベントになりました。

 

グランツリー武蔵小杉で開催された中原区の周年記念イベント。タイムカプセル収納品のお披露目や、区のPRムービーの上映、音楽ステージなどを行った。

 

このイベントの時に、PRムービーを一緒に作った方が感極まってハグしてくださったのが印象的で。私自身もイベント中に涙をこらえるのが大変だったぐらい感動してしまいまして、皆さんの思いが詰まった1日になったと思います。

 

岩倉 いいですね。参加された方は、この日、ここに自分がいたんだということを忘れないと思うんですよね。その場にいたお子さんたちが成人して、やがて親になった時に、「昔、こういうことがあってね」と子どもに聞かせる。そうやってずっとつながっていくのが周年イベントの素晴らしいところだと思います。

 

——では、周年事業を終えて次に行ってみたいことや、区民の皆さんに期待することがあれば教えてください。

 

岩倉 麻生区は区制40周年のプロジェクトチームとして、まちの人、地域の企業、行政と、すごく良いネットワークができたと思うんですね。なので、この関係性をさらに発展させていけばまちの資源になるよねという話が出ています。区制40周年が終わったから解散というのはあまりにももったいないので、今後もまだ楽しみは続いていくのではないでしょうか。

 

人見 幸区も同じです。区切りの年が全てではなくて、普段から地域に注目したり、地域のことを考える人が増えてくれればいいなと思っていますし、幸区盛り上げ隊も、そういった活動を続けていくと思います。

 

今、地域の中で何かを始めたいなと思ったら相談できる場所ができ始めているんですよね。各区でSDC(ソーシャルデザインセンター)が設立されますし、区役所だったり市民活動センターも相談ができる場になっています。地域の人たちが自分たちでまちを変えていく、新しいものを作っていくという動きが、これからどんどん盛んになっていくといいですね。

 

池田 中原区も、区制50周年事業を通じて団体さん同士のつながりが生まれて、まちがさらに良くなるきっかけができたと思います。令和6年に川崎市は市制100周年を迎えますので、皆様のように地域で活躍をされている方々と一緒に、川崎市を盛り上げていければなと思います。

 

(インタビュー・文/佐藤季子)

 

 

<川崎市内 区制周年を振り返る座談会>

 

(c) City of Kawasaki. All rights reserved.